オルセー美術館所蔵「印象派 ― 室内をめぐる物語」に行ってきました

4つの“部屋”を巡るように、室内の物語をたどる

国立西洋美術館で開催中の
「オルセー美術館所蔵 印象派 ― 室内をめぐる物語」
に行ってきました。

展覧会は4章構成で、まるで異なる部屋をひとつずつ訪れるように、
印象派が描いた “室内” の世界を体験していく流れになっています。

ここでは、私が実際に目で見て、立ち止まり、心に残った作品を中心に
章ごとに感想をまとめます。

目次

第一章 室内の肖像

人の“気配”を捉える入り口の章

最初に心を捉えたのは、ポール・セザンヌの「ギュスターヴ・ジェフロワ」


動きのある構図と豊かな色調が印象的で、人物の内面に踏み込むような力がありました。

1-3家族の肖像

室内という舞台を通して、その家族の関係性や生活がにじむ作品が並びます。

● アンリ・ファンタン=ラトゥール《デュプール家の肖像》


黒い服を着た四人が描かれた大きな作品。
不思議なのは、お父さんだけ横を向いていること。
描かれるのを嫌がったのか、家族での立ち位置なのか…
観る側が物語を想像せずにいられない一枚でした。

● アルベール・ベナール《ある家族》


30年以上前にオルセー美術館で見た記憶のある作品。
中央の女の子の強いまなざしと髪型は、今回見てもあの時と同じように印象深く、
まるで過去の自分と再会したような懐かしさがありました。
子供たちの溌溂さが画面から弾むように伝わってきます。

● エミール=オーギュスト・カロリュス=デュラン《母と子》


女の子の服の光沢からシルク素材が想像でき、
背景のカーテンが高い天井を暗示しています。
描かれた空間の豊かさと静けさが、作品全体を包み込んでいました。

クロード・モネ《アパルトマンの一隅》 — 展覧会で最も胸を打たれた作品

家族の肖像の流れの中で、ひときわ私の心を掴んだのがこの小さな作品。
“なんでもない部屋の一角”を描いただけの絵なのに、
なぜこんなにも深く響くのか、と驚きました。

カーテンの向こうから差し込む柔らかな光が、
テーブルの上や床に反射しながら室内へ入り込んでいく。
その光に呼応するように、
影のなかに少年がひっそりと立つ姿が浮かび上がる。

光と影が静かに呼応して、
その瞬間だけ現れる“ささやかなドラマ”が壮観でした。
胸の奥がじんわり温かくなるような、
息を呑むほどの静けさと深さを湛えた作品。

人物を積極的に描かずとも、
そこに暮らす家族の空気や時間が透けて見える――
モネの眼差しが捉えた「日常の美しさ」に強く心を打たれました。

この一枚との出会いが、今回の展示のハイライトです。

第二章 日常の情景

会話するように向かい合う作品たち

この章で特に面白かったのは、
ドガとマネの作品が隣り合って展示されていたこと。

● エドガー・ドガ《マネとマネ夫人像》

● エドゥアール・マネ《ピアノを弾くマネ夫人》

同じ人物が描かれているのに、こうも印象が違うのかと驚かされます。
画家の視点によって、“室内”も“人物”も別の物語になるのだと実感しました。

2-2 私的な日課

● エドガー・ドガ《背中を拭く女》


縦の筆致が気になってじっと観察していたところ、
油彩ではなくパステル画だと知り、描写の理由に納得。
パステルならではの温度と質感が、身体の柔らかさを生み出していました。

● ピエール=オーギュスト・ルノワール《大きな裸婦》


グラマラスでありながら清らかさのある裸婦像。
ドミニク・アングルやマネの裸婦とは異なる、ルノワールらしい光の包容力が印象的でした。

第三章 室内の外光と自然

部屋の中に差し込む自然の息遣い

室内に入り込む光の描写が中心となった章。時間の流れを感じさせる作品が多かったです。

● マリー・ルイーズ・ヴィクトリア・デュプール《花》


どこかゴッホの静物画を思わせる力強さがあり、
花という小さなモチーフに込められた生命力が画面全体を満たしていました。

第四章 印象派の装飾 ― 室内への新しいまなざし

絵画が“部屋を飾るもの”として生まれる瞬間

最終章では、室内空間そのものを飾るために描かれた作品が並びます。

● カミーユ・ピサロ《収穫》


テンペラ画で描かれ、まるでフレスコ画のような風合い。
扉の上に飾るために作られたという背景を知ると、そのサイズ感や構図の伸びやかさが一層理解できます。

● モリゾの家の模型

ピンクの壁の可愛い家の模型がありました。暖炉の上に飾られた絵は、《ウルカヌスの鍛冶場》の一部を切り取ったものとのこと。部屋から画家の暮らしを読み解くという、展覧会全体のテーマのひとつがここで鮮やかに示されていました。

おわりに

4つの章を通して、
室内は人がいなくても、その人の人生を語る
ということを深く実感しました。

家具、光、空気の流れ――
画家たちはそれらを通して、人物の心や時代の生活を描き出していたのだと思います。

そして最後に。
出口付近の物販コーナーには長い行列ができていました。
実は フェイラーのタオルハンカチが欲しくて心の中で楽しみにしていたのですが、

お腹が空いていて並ぶ気力がなく、今回は泣く泣く断念。
(次の機会があれば手に入れたい……!)

静かな余韻とささやかな心残りを胸に、美術館を後にしました。

この記事を書いた人

国産時計メーカー勤務歴20年以上の私、えいさんが、海外ブランドの可愛いファッション時計に魅せられ、その魅力を多くの方にお届けしたく発信しています。詳しくはプロフィールページへ

目次
閉じる